JA東京みどり 金融機関コード:5072

HOME > 広報誌 みどり > 2015 夏号 Vol.92

2015 夏号 Vol.92

営農レポート

難防除害虫の対策
~上手な防除で適切に薬剤抵抗性を管理しよう~

難防除害虫として知られる「アザミウマ」や「コナジラミ」等の被害は北多摩地域でも年々増加しており、防除に苦労されていることと思います。難防除とされる害虫の多くは薬剤抵抗性が発達しており、効果的な農薬が限られてしまうことにあります。今回は、薬剤抵抗性を発達させないための技術を紹介します。

害虫の薬剤抵抗性とは

同じ系統の農薬を使い続けるとやがてその農薬が効かなくなる現象のことです。
抵抗性が発達する原因は害虫が強い毒性に慣れるというものではありません。害虫の遺伝子は人間と同じように個体によってばらつきがあり、遺伝的にある薬剤が効きにくい個体(抵抗性個体)がわずかに存在します。そこに同じ効き方をする(同じ系統)農薬を繰り返し使用すると、その農薬に抵抗性を持つ個体だけが生き残り、集団のなかの多くを占めるようになります。こうして集団的に薬剤抵抗性が発達してしまうと、今まで有効だった農薬が効かなくなることになります。(図1)

抵抗性が発達するイメージ
図1 抵抗性が発達するイメージ

害虫の薬剤抵抗性を回避するには

●ローテーション防除を行う

ローテーション防除は複数の系統の農薬を組み合わせて計画的に使うことで害虫の薬剤抵抗性を防ぐ防除技術のことです。
最初に使用した薬剤に対して抵抗性を持った害虫が生き残ったとしても、次に別系統の薬剤を使用すれば、最初に使用した薬剤に抵抗性を持った害虫を抑えることができます。

●農薬に頼らない防除を行う

農薬一辺倒にならないよう防虫ネットで被覆するなどのIPM(総合的病害虫管理)を意識的に実施すると、薬剤の使用回数を減らすことができ、抵抗性の発達を遅らせることができます。

ローテーション防除のポイント

●系統をしっかり確認する!

商品名が違っても中身の有効成分は同じであったり、別の有効成分であっても同じ作用性を持つ薬剤であったりするので、系統をしっかり確認して適切な薬剤選択を行ってください。
しかし、農薬ラベルには有効成分名は書いてありますが、どの系統に属するのかは記されていません。系統を確認する方法としては「病害虫防除指針」の薬剤系統区分などで調べる必要がありますが、登録農薬の少ない系統については「他」と記載されており検索できないことがあります。その際は、最寄りのJA経済センターや普及センターまでお問い合わせください。
また、最後に薬剤ローテーションの例と主な殺虫剤がどの系統に属しているかを示す表をつけましたので、農薬選びの際に参考にしてください。

●例 コマツナのアブラムシに対する薬剤ローテーション

薬剤ローテーション

殺虫剤の系統
系 統 製品名
有機リン系 ジェイエース、オルトラン、スミチオン、ダイアジノン、ネマトリンエース、マラソン
カーバメート系 アドバンテージ、オンコル、デナポン
ピレスロイド系
ピレトリン系(合ピレ)
アグロスリン、アディオン、トレボン、フォース
ネオニコチノイド アクタラ、アドマイヤー、スタークル、ダントツ、モスピラン
アベルメクチン系
ミルベマイシン系
(マクロライド系)
アファーム、コロマイト
スピノシン系
(マクロライド系)
スピノエース、ディアナ
ジアミド系 プレバソン、フェニックス
系 統 製品名
Bacillus thuringiensisと殺虫タンパク質生産物
(BT剤)
エスマルク、ゼンターリ
ベンゾイル尿素系(IGR) カスケード、マッチ
エトキサゾール(IGR) バロック
クロルフェナビル
DNOC
スルフラミド
コテツ
METI剤 サンマイト、ハチハチ、ピラニカ
ネライストキシン類縁体 パダン
ピメトロジン チェス
フロニカミド ウララ

※農薬を使用する際は登録内容を確認してから、正しく使用してください。