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2014 夏号 Vol.88

営農レポート

作物に有害な土壌センチュウとその対策について

近年、北多摩地域で土壌センチュウの被害が拡大しているようです。各地の農産物品評会に出品されるダイコンやサツマイモ等にも被害が見受けられます。今回は、この「土壌センチュウ」について紹介します。

センチュウとは

センチュウとは糸のような姿をした動物で、小さいために(主に1ミリ以下)通常は肉眼で確認することはできません。英名から「ネマトーダ」「ネマ」と呼ぶこともあります。人間を含む動物や植物に寄生する他、ありとあらゆるところにいます。土壌中にも多く存在し、一握りの土に数百あるいは数千頭がいると言われています。
大半のセンチュウは植物に影響を与えませんが、ごく一部のセンチュウが植物に寄生し、農作物に被害を与えます。一方、この有害なセンチュウを食べてくれる有益なセンチュウもいます。

ネコブセンチュウ2齢幼虫

体長0.6mm程のネコブセンチュウ2齢幼虫
(写真提供:東京都農林総合研究センター)

作物に被害を与える主な土壌センチュウの種類

ネコブセンチュウ
幼虫が植物の根に侵入して増殖します。ネコブセンチュウの侵入を受けた根は組織がもり上がってコブができるので、肉眼でも寄生されていることが確認できます。ナス科、ウリ科、オクラ、ニンジン、インゲンマメなどあらゆる作物で被害が拡大しています。
シストセンチュウ
根に寄生しますが、ネコブセンチュウのような明らかなコブはつくりません。都内ではエダマメに対するダイズシストセンチュウの被害が発生していますが、茎葉の黄化症状を引き起こします。
ネグサレセンチュウ
塊根、球根、地下茎などに侵入し、侵入部位は褐色から黒色を呈し、最終的には表層の壊死に至ります。サツマイモ、ジャガイモ、トマト、ダイコン、ニンジン、ゴボウなど多くの作物で被害が見られます。掘り取り後の貯蔵中にも被害が拡大するので、イモ類などは注意が必要です。
寄生してしおれたキュウリ

ネコブセンチュウが寄生してしおれたキュウリ
(写真提供:東京都病害虫防除所)

ダイコン肌の白斑

キタネグサレセンチュウによる
ダイコン肌の白斑

土壌センチュウ害を減らすために

●殺センチュウ剤

センチュウ類に登録のある薬剤には、以下のようなものがあります。各剤によって使用できる作物、使用時期、使用方法等が異なりますので、使用にあたっては農薬のラベルを必ず確認してください。

分類 主な薬剤
土壌消毒剤 液剤、油剤等 D-D、クロルピクリン、キルパー
粉粒剤 ガスタード微粒剤、バスアミド微粒剤
定植前、生育期に処理する農薬 液剤、乳剤、水和剤 ネマモール乳剤、ガードホープ液剤
粒剤、粉剤等 ネマキック粒剤、ラグビーMC粒剤、ネマトリンエース粒剤
その他 石灰窒素 石灰窒素
生物農薬 パストリア水和剤

●対抗植物(センチュウ抑制作物)

対抗植物とは、栽培することによりセンチュウ密度が低減する植物です。まだ、その作用の解明は十分ではありませんが、経験的に右表のような植物が対抗植物と呼ばれています。対抗植物はセンチュウの活動が活発な時期に3ヶ月程度栽培すると効果的です。

対抗植物 対象となるセンチュウ
ギニアグラス サツマイモネコブセンチュウ
ラッカセイ サツマイモネコブセンチュウ、キタネグサレセンチュウ
クリムソンクローバー ダイズシストセンチュウ
フレンチマリーゴールド サツマイモネコブセンチュウ、キタネグサレセンチュウ
イチゴ サツマイモネコブセンチュウ
トウガラシ、ピーマン ジャワネコブセンチュウ
スイカ キタネコブセンチュウ
アスパラガス キタネコブセンチュウ、キタネグサレセンチュウ

●熱、土壌還元による防除

センチュウは60℃程度に数分さらすと死滅します。夏期の高温を利用した「太陽熱消毒」のほか、「熱水消毒」「蒸気消毒」も安定した効果があります。低濃度のエタノールを利用した土壌還元(低酸素)による消毒法も開発されています。

●被害拡大の防止

センチュウ自身には移動能力がほとんどありません。被害圃場から有害センチュウを持ち込まないように、鍬や長靴、トラクターのロータリーやタイヤなどはよく洗浄してください。また、センチュウが寄生する作物残渣や雑草を放置せず、圃場をきれいにすることも重要です。

その他

センチュウ被害と紛らわしい症状として、アブラナ科植物の根こぶ病、マメ科植物の根粒菌、小動物による食害跡などの可能性もありますので、見分けがつきにくい場合には普及センターまでご相談ください。

根こぶ病

ブロッコリーの根こぶ病(センチュウに非ず)