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2014 新春号 Vol.86

税務・法律・人事・労務管理相談

高齢者の離婚はやめたほうがよい?

1.最近の法律相談の有力テーマとして、高齢者の離婚問題がある。

高齢者とは、65~74歳までの前期高齢者層においては、「熟年離婚」があるが、本稿は後期高齢者、即ち75歳を超えた夫婦の離婚について考察する。
民法第770条は、離婚原因として、(1)配偶者の「不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、治療の見込みのない強度の精神病」をかかげ、そのあとに「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」としている。その部分の中に、実務上「性格の不一致、家庭内暴力(DV)」などが問題とされている。特に高齢者については、性格の不一致が耐えられなく、かつドラマチックな面が多い。
例えば、

(1)婚姻生活破綻の最大の原因について、夫婦間の生活観、人生観上の隔絶(いわゆる性格の不一致)にあり、生活観、人生観は各人にとって価値のあるものであるとして、離婚請求を認めた事例(東京高判昭54・6・21)。

(2)妻の性格・態度等が夫婦の間を冷却させた原因ではあるとしながらも、これらの妻の行動は、夫が妻の人間性を理解し包容していくおおらかさに欠けていた事に端を発するといえなくもないとし、将来的には修復も可能であるとして夫の離婚請求を棄却した事例(札幌地判昭50・3・27)。

があり、裁判所はその判断に苦慮している様子である。

2.そのような理由で、晩年における人生上の破綻を避けるには、どうしたらよいか。

(1)経済的強者が、弱者に定期的に物心両面において支援する。

(2)パートナーの呼び方を工夫して、相手方の尊厳を傷つけない配慮が必要である。最近は、「おじいちゃん」、「おばあちゃん」と言わないで、「じいじ」、「ばあば」と言うことがはやっている。

(3)アベノミクスには、「毎年のインフレの目標を1%とする」と高言しているから、毎年1%のインフレだと10年で10%の金銭的価値の減少を伴う、という小学生でも理解できる簡単な副作用への処方箋がない。金銭管理は、それぞれしっかり損をしないように賢く管理せよ、ということらしい。

(4)そして、昔から「地獄の沙汰も金次第」とも言うから、そこそこの枕金を残しておかないと大変なことになる。その主宰者を予め決めておく必要がある。侘びしいお見送りとなるから。 など現実は厳しいけれども、これまでもそうだったように、真面目に、努力して生きていれば、「すべてが何とかなり、うまくいく。」と信じ、パートナーを大切にし、尊敬することである。

3.余りにも理解に欠けるパートナーや親族に対しては、遺言でもって、自分の財産の配分方法を決めておいて、最後まで自分の意思を貫く、という方法もある。しかし、その内容は、前記の諸事項をバランスよく入れておいた方が、トラブルがなくてすむ。ちなみに、遺言は、多少の費用を負担していただければ、最寄の公証役場ですぐに作成していただける。

要するに、眼前の現実をそのまま、あるがままに認めて、受容して、それを正確に分析して因果関係を明らかにしつつ、個別的に対応するしかない、ということしかなさそうである。そして、損をしないように、こまかく打算して、しっかり生き、しかも転んだりしないように、骨折しないように。 昔から、「七転び八起き」という励ましの言葉があるが、昨今では、パンチを受けて、ダウンしても、「七転び八転び」しても、ボクシングのようにカウントエイトでも起き上がるだけの、したたかさを持ち合わせる必要がある。