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2018 新春号 Vol.102

税務・法律・人事・労務管理相談

年金の繰上請求と繰下請求

1.本来の受給開始年齢と繰上請求・繰下請求
(1)現在、年金の受給開始年齢は原則的には65歳です。しかし、厚生年金の報酬比例部分については、特別支給の老齢厚生年金(以下特老厚という)として65歳前から受給できる方もいます。
 この特老厚も支給開始年齢は生年月日に応じて将来的には徐々に65歳になりますが、この年金は名前通り特別に支給される年金なので受給開始年齢での受給をお勧めします。(受給を遅らせてもメリットなはい)
(2)一方65歳から始まる年金の名前は老齢基礎年金・老齢厚生年金です。(名前に特別支給は付かない)
 この年金は受給開始時期を65歳前にしたり、66歳以降にしたりすることが可能な年金です。
 受給開始を65歳前に早めることを繰上請求といい、66歳以降に遅らせることを繰下請求といいます。
2.繰上請求の特徴(注意事項)
(1)繰上請求すると必ず適用されることは、年金額は繰上請求月に応じて減額され、取り消しは出来ません。
(2)一定の状況になったときに適用されること(主な一定の状況は次の通り)
 ・繰上請求後は国民年金に任意加入できません。
 ・遺族年金を受ける場合には、65歳までは老齢年金と遺族年金はどちらか一つの選択になります。
 ・繰上請求すると一定の障害年金の請求や寡婦年金の請求はできません。
 (任意加入しようとした時、遺族年金や障害年金を受けるようになった時、寡婦年金を受けるようになった時に適用されるデメリットですが、このような状況になることは通常は多くないと思われます。)
(3)繰上請求すると請求から200月(16年8月)後に本来請求した時と比べ総受給額が逆転します。
 (繰上請求から200月以上経過後では、本来請求での累積額が有利となる)
3.繰上請求するかどうかの判断について
(1)金額的な面だけから比較すると、繰上請求は有利とは言い難いです。
 理由として、60歳時点での平均余命は男性:23年、女性:28年といわれていますが、請求後16年8月で金額的には累積額が逆転しますので、逆転した後も長生きする可能性が高いからです。
(2)しかし病気がちで長生きに自信のない方の場合には繰上請求の選択も考えられます。
(3)また年をとると旅行に行ったりする機会も減り全般的にお金を使わなくなるので、若いうちにお金を使うことで繰上請求する選択も考えられます。
(4)ただ、老齢年金制度がある理由は、長生きした場合の保険給付であることを考えると、老後は資金的に余裕があった方が安心した生活が送れるという考え方もあります。
4.繰下請求について
(1)65歳前に特老厚を受給している方が65歳になると、65歳の誕生月の始めに日本年金機構から65歳以降の年金についての請求書(はがき形式)が送られます
 この請求書は65歳以降の年金について、繰下請求するかどうかの意思確認を兼ねています。
(2)繰下請求は他年金(遺族年金・障害年金)を受給している場合には請求は出来ません。
 また、繰下請求は65歳から1年以上待たないと(66歳以降にならないと)請求出来ませんが、繰下請求自体は基礎年金・厚生年金のそれぞれについて別々に繰下可能です。
(3)繰下請求すると請求から約143月(11年11月)後に本来請求した時に比べ総受給額が逆転します。
 (繰下請求から143月以上経過後では、繰下請求での累積額が有利となる)
 いずれにしても、繰上・繰下請求前に受給見込額等の調査をし、納得の上で手続きすることが必要です。